例えば星をつかめるとして

「僕が回っていた恒星も、太陽のような優しい光ではなくてね。もっと明るすぎる、真っ赤な光を撒き散らしていたんだ。寿命が近い恒星の姿、というのかな。だからこの地球で見るもの全てが、綺麗だなって思えてね」

「……寿命、って」

さらりと告げられたその言葉を、つい聞き返した。星野はけろりと笑う。

「そうだよ。そう遠くない未来、僕の恒星は寿命を迎えて、超新星爆発する。そうしたら僕も取り込まれてしまうから、その前に、宇宙の姿を見ておきたくて、ここに来たんだ。もちろん落下する予定は、なかったんだけど」

「え……」

驚いてしまって、それ以上何も言えなかった。

超新星爆発に取り込まれる、というのが、星野のような小惑星的にどういうことなのかはわからないけど、ただでは済まないのではないのだろうか。星野は、散ってしまうのだろうか。ばらばらになって、消えてしまうの?

そう考えると、急に怖くなった。星野がいなくなって、そして消えてしまう未来がくることが、怖くなった。

「地球にずっと……は、いられないの?」

先ほど答えが出ている問いを、それでも私はかける。

星野はゆっくりと、首を横に振った。

「それは、出来ない。僕は、この地球を壊したくないから」

「………」

私たちの間を、乾いた風が吹き抜ける。繋いだ手から伝わる体温は、私のそれよりも低かった。

「君と沢山過ごしたいんだけど、そうもいかないみたいなんだ。だから、流星が叶えてくれたらいいなって思ったんだけど、そもそも僕も星だもんね。願うのもおかしな話かな」

「……」

なんでもないことのように、星野は笑う。私は無性に腹が立った。なんでかは、わからなかったけれど。
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