例えば星をつかめるとして
第三章
*遥かより夜を照らす光
「松澤さん、欠片を見つけたんだけど、拾いに行くの付き合ってほしいんだ」
ホームルームの終わりと共に、私の横に立った彼は笑顔を浮かべながら、言った。
「……また? 今度は本当なの?」
この前の顛末を思い出しながら思わず疑るようにそう訊ねる。彼は慌てた様に首をぶんぶん振った。
「ほんとだって。誘える日が来るの、ずっと待ってたんだよ。松澤さん、忙しそうだったから」
「あー……」
忙しそう、という言葉に心当たりのある私は、明後日の方向を向いた。
確かに、前回星見峠に行った時から、日はかなり経っていた。あの後すぐにテスト期間が近くなり、今日やっと、それが終わったのだ。
確かに、私がテスト勉強をしている期間はずっと、彼はどこかに誘ってきたりはしなかった。もしかして、気を遣ってくれていたのだろうか。
「今度はほんとだよ。場所だってわかってるんだ」
「……まあ、それなら良いけど」
私は頷く。今日はテストが二科目しか無かったのでまだ午前中だ。十分、時間はあった。
「え、今日、澄ちゃんと星野くん、デートなの?」
唐突に真横からかかる高い声。振り向くと、真理が目を真ん丸くしてこちらを見ていた。
「え、いや、そういうわけじゃ」
デート、という単語にどきりとしながら、私は慌てて首を横に振った。けれど真理は一人で頷きながら、納得したように息を漏らした。