涙ーありがとうを君にー


「出迎えご苦労。

面をあげてよし」

と、真ん中に立つ老人が声を放つ。

顔をあげると、
そこには滋行(藤宮の当主=瑞穂の祖父)と、
峰子(成宮の当主夫人=湖咲の祖母)が立っていた。



「お久しぶりです。

お元気していらっしゃいましたか?」

と、懍が問う。

「まあな、中に入ろうか」

と、皆を促す。

懍を先頭にして滋行達が道場を兼ねる離れへ入り、
奥にある座敷で腰をおちつかせる。


「ときに、瑞穂よ。

今よりこの湖咲以外の男を想い慕うことを禁ずる。

湖咲もだ。

瑞穂以外を想い慕うことを禁ずる」

と、二人にむかい命ずる。
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