涙ーありがとうを君にー
「私と瑞穂が、藤宮の屋根の上で夜空を見ているところに、
懍様がお帰りになりました。
すると、
脇腹に傷をおっておられたので、
傷の手当てを瑞穂がいたしました」
湖咲の言葉を瑞穂が引き継ぐ。
「傷の具合から言いますと、命の別状はありません。
ただ、先程湖咲からお聞きしたと重いますが、
あの傷はおそらく、
妖の類によるものではないかと…」
二人の言葉を聞き終えると、
「懍が快復するのを待つしかないか…
何者かが我々を狙っているようだな。
皆十分気をつけなさい」
と、滋行が注意を促す。
そして、峰子が言い放つ。
「…急いで琥珀と瑠璃に帰還命令をだしなさい。
霄、本家の伝令役が成宮の客間に待機させてあります。
遣って良し」
「御意」
霄が居間をでていき、
再び重い空気が充満する。