涙ーありがとうを君にー
「…はぃ…」
小さい声で返事をした。
湖咲は瑞穂の部屋がある東奥の二階へ運んだ。
瑞穂の部屋は女の子とは思えないほど、
殺風景なものだ。
瑞穂を壁にもたれかけさせて、
押し入れから布団を引っ張り出して敷く。
瑞穂をそおっと、
布団に寝かせ、
立ち上がろうとすると、
「みしゃき〜、
どっか行っちゃやだぁ〜」
袖を掴んで泣き始める。
「……、わかった。
どこも行かないから、
ちゃんと寝ろ?」
瑞穂の枕元に座りなおし、頭を撫でる。
「ほんとぉ…?」
目尻に涙をつけて聞いてくる。
「本当だよ」
それを聞くと瑞穂はニコッと笑って瞼を閉じた。
しっかりと袖をにぎりしめたまま…。
寝付いたのを確認して、
袖を離そうと手を掴んだら、今度は手を握って離さなくなってしまった。
「…参ったな…」
そういって、
ゴロンと湖咲も横になると、いつの間にか眠りについてしまった。
「あらま。仲良しねぇ…
写真とっとこ」
瑠璃が瑞穂の部屋を覗くと手を握って額を合わせて眠る、
あどけない寝顔の少年少女がいた。
携帯で二人の寝顔を撮ると湖咲にも布団を掛けてあげ、瑠璃は瑞穂の部屋をあとにした。