凪いだ海のように
波音の腕をつかんで放さないでいると、カノンちゃんがこうしよう、と提案した。


「峰は江藤と帰る。それで、菊池は俺が送っていく。これでどうだ?」


「……え?」


カノンちゃんが、波音を?


隣を見ると、波音もきょとんとした顔でカノンちゃんを見てる。


反応のないあたしたちに、カノンちゃんは噛んで含ませるように説明を始めた。


「だから、峰は菊池が心配で一人じゃ帰せない。かといって菊池は峰と江藤を二人きりで帰してやりたい。この矛盾を解決するには、俺が菊池を送っていけばいい」


どうだ? といわんばかりに胸を張るカノンちゃん。


……確かに、カノンちゃんのいうとおりにすれば解決する。


でも。


「カノンちゃんの家、波音のうちと逆方向じゃない?」


波音とカノンちゃんの家は、丁度学校を挟んでいる。


逆方向のカノンちゃんが送るより、おんなじ方向のあたしたちと一緒に帰ったほうが、効率がいいはず。


そんなあたしの心配を、カノンちゃんは大丈夫、と笑った。


「俺も今日はそっちの方向に用事があるんだ。だからついでに送れる。心配ご無用だ」
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