凪いだ海のように
「あたしが、海に入れない理由のこと?」


「そう。そのこと」


夏休み。


波音はいつも一週間、一人合宿をするの。


ほかの部員が海合宿に行っちゃうから。


海に入れない波音は、学校のプールでひたすら泳いでる。


その一週間と丸々かぶさるように、美術部臨時顧問の二ノ宮海音先生――カノンちゃんが、学校に絵を仕上げるために学校に泊り込んでいたんだ。


どういった接点があったか知らないけど、お互いひとり合宿の身だし。


話をする程度には波音と仲良くなってたカノンちゃんに、教えたの。


波音がなんで、海を嫌ってるのかを。


本人の知らないところでそんな話をしちゃったことを、あたしホントは後悔してるんだ。


だって、自分の秘密をべらべら話されるのって、気持ちのいいことじゃないでしょ?


波音だって、よく思わないに決まってる。


でも、カノンちゃんなら……と思ったこともホント。


カノンちゃんなら、何とかしてくれるんじゃないかって、思ったんだもん。
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