凪いだ海のように
海の絵を描くカノンちゃん。


あんなに綺麗な海を描くカノンちゃんなら、波音の海嫌いをすこしは良くしてくれるんじゃないかって、そう思ったの。


あたしにできることは、くやしいけどなんにもなかったから。


だからせめて、綺麗な海の絵を見て、少しでも海に足が向くようになればいいなって、ただ願ったんだ。


「怒ってないよ」


ようやくこっちを見てくれて、波音はしっかり答えてくれた。


その目は澄んでいて、嘘をいっているとは思えない。


「さくらは、あたしのことを思っていってくれたんだよね?」


「波音……」


にこりと笑う波音の表情に、泣きそうになっちゃう。


あたしの気持ちは、きちんと正確に伝わっていたんだ。


よかった……。


「さくらのいう通り、あたしは変わったと思うよ。先生と話をして、波糸のことも少し整理がついたっていうか……。言葉にするのは難しいんだけど、とにかくさくらのおかげだから」


ありがとう。


綺麗な感謝の言葉は波音の心からのもので、うれしくてうれしくて、なんにもいえなかった。

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