凪いだ海のように
波音の好きな人……、同じクラスの松岡くんかな?


それとも、同じ部活の広瀬くん?


彼、あからさまに波音のこと好きだもんねぇ。


告白でもされたのかな?


でもそれじゃあ波音が好きってことにならないし……。


怒涛の速さで脳内を回転させていると、波音がぼそりとつぶやいた。


「さくらにだけは教えられないし」


……それって、どういうことかしら? 波音さん。


あたしにだけは教えられないって……。


はっ! まさか……。


「まさか……けーちゃん……?」


あたしのダーリン、江藤啓太くんじゃ……。


わなわな震えながら波音を見ると、目を見開いて驚いている。


「ちっ、違うよ! 勘違いしないで! さくらに教えられないのはそういう意味じゃなくって……ってええとつまり、それだけはないから!」


天地がひっくり返っても、さくらの『けーちゃん』じゃないから!


必死の形相で違う違うと手を振る波音。そこまでいうんだから、けーちゃんじゃないんだよね。

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