凪いだ海のように
カノンちゃんがあごで廊下を示すと、そこにはけーちゃんが。


「え? 迎えに来てくれたの?」


「美術室の電気がまだついてたから、一応見ておこうかと思ってさ」


やーん、うれしい。


思いがけずけーちゃんと帰れるなんて。


「待ってて! すぐ片付けるから!」


スケッチブックを閉じて鉛筆をペンケースに投げ込む……って、そうだ。


「波音! ごめんね、こんな時間まで付き合ってもらっちゃって……」


「いいよ、大丈夫。それより早く片付けちゃいなよ。せっかく二人で帰れるんだからさ」


二人って……波音ったら。


「波音も一緒に帰るんでしょ?」


「あたしがいたらお邪魔じゃない。……たまにしかないんでしょ? こんなこと」


後半部分はこそこそっと耳元でささやく波音。


うう、なんてやさしいんだろう。


だけどそんなことより。


「そうだけど! でも危ないよ、こんな時間じゃ」


外は真っ暗だもん、こんな中ひとりで帰せないよ。


付き合ってもらったんだし、波音が一人で帰るなんて絶対だめ。


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