私は暇じゃない




 友人に相談していたら、だ。

 智治と見知らぬ女性が一緒にいると耳にした。こっそり確かめたら、ああと。だから今回がはじめてでもなんでもない。

 どうしてこんなことに?
 私に不満でもあったの?

 呆然としたものの、私だって暇じゃない。浮気している男に構っている暇はないのだ。浮気され、しかもその相手は友人だと思っていた人だなんて最悪だ。




「じゃあ、私は帰るね」

「どうして?」



 あくまでもたまたまばったり会って、カフェでお喋りをしただけ、という体裁ぶったそれに、私は何故と問いかける。洋子はだって…といいたげだった。友人だから疑われないという自信からだろうか?
 それ、ばれてるから。
 私は逃げられないように、洋子の隣に座る。ぎょっとした洋子と、何をするつもりかひやひやしている智治。

 私が悪者みたいじゃないか。
 悪いのは、そっちです。



「この前の土曜日は楽しかった?水族館。イルカショー見て水かかって大変だったらしいから、風邪でも引いてないかなって思ってたんだけど、案外平気なものだね。雨に濡れて風邪ひくって展開は漫画だけか」

「どうして、お前が」

「どうしてって」



 むしろ、こっちが聞きたい。
 あれで隠しているつもりなのか?



「友達から連絡きてびっくりしたんだよね。待ちぼうけくらったあの駅で私は知ったんだけど―――二人がそろって写真をSNSにあげてるから簡単に知れるようになってたみたいよ?」



 SNSというのは怖い、というのはこういう所もあるからだ。安易な気持ちでアップしているから、こうなる。浮気している立場で公にアップするというのが凄いが。

 実はいうと、亮平とまこちゃんは智治と私の共通の知り合いである。といっても、私の知り合い、といった方がいい。私が紹介したんだから。


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