立志伝
と、そこへ…
「みなよく来てくれた。今日は年に一度の節会だ。日頃のしきたりなど堅苦しい事は無しだ。各々酒を酌み交わし楽に酔うがよい。そしてまずは国のしきたり通り私の子、玖葛の笛を。」
それを聞くと待っていたとばかりにどよめく。
(人の声が大きくなった…そろそろだろうか。)
玖葛は自分の出番が迫っている事を知り、笛を握りしめた。
「玖葛様、もうすぐのようです。」
高杯が耳元で囁いた。
「そのようだ、行ってくる。」
(玖葛様…どうか幸あらん事を…。)