立志伝
「玖葛。」
「はい、ただ今。」
そして玖葛は歩みを進めた。
途端、人々の囁き声が消えた―――
そして誰もが思った事だろう…これが真の美しさなのだと。
玖葛は美しかった。
見事な曲線を描く輪郭、筋の通った鼻、ふっくらとした唇、雪のように白い肌、なにもかも見通すかのような瞳…
まだ幼さは残るものの、それが俗世離れしれいるものだという事は一目で分かった。
物音一つしない中、静かに笛の音が響く――
▼▼▼
「玖葛、今日の笛の音は実によかった。」
「ありがとうございます。」
「また次の年も頼んだぞ。」
「はい。私でよかれば。」
「ああ、…今日はもう疲れただろう?ゆっくり休むといい。」
「はい、では失礼致します。」
そう言うと玖葛は部屋を出た。