立志伝
その様子を垣根の影から見る者が一人―――
「誰かいるのだろう?」
(おや、気付いておられたか。目敏い子だ。)
―ガサ―――
「これはこらは玖葛殿。よくお気づきになりましたね。」
「叔父上…」
「いかがされたのです?私はあなたの叔父なのですよ、久しぶりに会うとはいえそのように驚く事は無いでしょうに、クス」
「いえ…そうでしたね、失礼をしました。」
「いいえ。」
(私はこの方が苦手だ…。あの瞳に何もかも見透かされるようで……。それに何故あのような所にいたんだ?)
「玖葛殿。」
「何でしょう?」
「先日の祭事での笛の音は実に見事でしたよ。」
「楽がお上手なあなたにそう言っていただけるとは光栄です。ですが、あなたは確かあの場にいらっしゃらなかったはずでは?」
「ああ、確かにあの場には行きませんでしたが宮中が静かだったためでしょう、私がいた部屋まで聞こえてきたのですよ。」
「そうでしたか…。」
(そろそろか…)
「玖葛殿、」