立志伝

「かしこましました。」


「鈴駒殿もお元気なようですね。」


「ええ、よくしてもらっているのですよ。後で話してみるといいでしょう。鈴駒も喜ぶでしょうから。」


「はい」


(何か考えていらっしゃるなだろうか?)



そう、玖葛には気になることがあった。それは先程花を渡してから浮瀬が時折見せる何か考え込むようなしげさだった。



「玖葛」


「は、はい?」


「あの花はそなたが摘んだのですか?」



「いいえ、…架藍様ですが。」


「架藍様…?そなた架藍様にお会いしたのですか?」


「はい、?」


(架藍様は病床だったはずでは―――)


「母上?」



「ああ、すみません。話の最中でしたね。」


「ご気分が優れないのですか?」


「いいえ、大丈夫ですよ。」


微笑んでそう答えた浮瀬だったがその心情は穏やかと言えるものではなかった。


浮瀬は知っていたのだ、架藍が玖葛に渡し自分の元へとやってきたりんどうの花言葉を―――――








悲しみにくれるあなた――
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