立志伝
「玖葛はどこに?」
今日の執務を終え葛螺は息子の居場所を尋ねた。
「はい、ただ今宮にて浮瀬様といらっしゃるかと。会いに行かれてはいかがです。」
「そうか、ならばよい。明日にでも会いに行こう。」
葛螺は側官にそう言い残しその場を去った。
時を同じくして宮では玖葛を抱いた浮瀬がそれは愛しそうに我が子を見つめていた。
玖葛は浮瀬にとって一人目の子であり待望の男児であったのだ。それも致し方ないだろう。
「玖葛、玖葛、父上に似てなんと見目麗しい事でしょう。良い子に育つのですよ。」
玖葛の若葉色の瞳はこの時母の顔をしっかりと捉えたのだった。