立志伝
「浮瀬。」
「はい、何でございましょう。」
「玖葛はどこにいる。」
「先程寝てしまったのですよ。どうぞこちらへ。」
葛螺と浮瀬は久方ぶりの再会を果たし共に我が子の待つ場所へ向かった。
「こちらですよ。どうぞお入り下さい。」
「ああ。」
葛螺は仕切りを動かし中へ足を踏み入れた。
「よく寝ているな。安心した。」
「そうでございましょう。私も驚いたのですよ。赤子というのはもっと泣くものだと伺っていましたから。」
「そうか…。きっと聡い子なのだろう。先が楽しみなものだ。」
「ええ、本当に。」
浮瀬がそう答えると葛螺はその場を立った。
「お帰りになられるのですか?」
「ああ、次は玖葛が起きている時に来よう。」
そう言い残し葛螺はその場を後にした。