イケメン伯爵の契約結婚事情
「メラニーがやられたのは脅しだ。お前にこれ以上余計な動きはするなということだよ。次に狙われるとしたらお前だ。頼むから大人しくしててくれ」
そこに危険があろうとなかろうと、一緒に分かち合いたいのだ。
そう伝えたいのにうまく言葉にできず、もどかしさからエミーリアは怒鳴ってしまう。
「狙われるならフリードだって一緒じゃないの」
「俺は大丈夫だよ」
「どうしてそんなことが言えるのよ。いやよ、私、あなたに何かあったら」
涙目でつかみかかったエミーリアを、フリードは目を眇めて見つめた。
そして次の瞬間、フリードの腕がエミーリアの腰を掴んで引き寄せた。
「……っ」
唇をふさがれて、エミーリアは思わず息を飲んだ。
でも声が出せない。頭の後ろをしっかり押さえられ、ゆっくりなぞるような口づけは、彼女から力を奪っていく。
力が抜けてきたころ、ようやく唇が離れる。彼の吐息を唇に感じ、自然に流れた涙が頬を伝う。
フリードは大きな指でその涙をぬぐうと、エミーリアを腕の中に抱きしめた。