イケメン伯爵の契約結婚事情
8.毒の正体
それから数日、エミーリアは本当に室内に閉じ込められていた。
食事も部屋に運び込まれ、入浴と排泄の時しか部屋の外には出られない。
抜け出そうかと試みたが、今まで味方であったはずのトマスが、今回はフリードの方に味方していて出られないのだ。
「お願いですから、大人しくしていてください」
メラニーの部屋から出ればばれないかと思ったが、あっさりとトマスに捕まり部屋に戻される。
「書庫に行きたいだけよ」
読み途中の本も書庫に戻されてしまっていた。
せめて暇つぶしにそれを取り戻したいのだが、書庫への移動さえ制限させられている。
「でしたら、フリード様の許可を取ってください」
「トマス、あなたどっちの味方なの?」
「フリード様とエミーリア様は敵対してるわけじゃないでしょう。今はフリード様の方が正しいと思っているから従っているだけです」
にべもないとはこのことだ。
そして幼少期から知られているトマスを出し抜けるとはエミーリアも思っていない。仕方なく、頬を膨らしたまま部屋に戻り夫が来るのを待った。