イケメン伯爵の契約結婚事情
あれから使用人の話も聞いたが、メラニーだけが特別なものを食べたということはなく、もちろん厨房の面々もおかしな食材など使ってはいなかった。
であればメラニーだけに入れられた毒ということになるが、メラニーは使用人の中でも新参であるし、礼儀正しく真面目な性格から評判は良かったため、狙われる理由も犯人のめぼしもつかなかったのである。
命が無事だったということもあって、結局食中毒ということで処理されそうな流れだ。
メラニーは指をこすり合わせながら、おずおずと口を開く。
「エミーリア様。私の心配してくださるの、とても嬉しいです。でも、私、やっぱり別室に移させてほしいのですが」
「どうして?」
「この状態では仕事もできませんし、お荷物になるだけです。ここには奥様のお世話をちゃんとできる侍女が必要です」
「世話なんていいのよ。私、旅に出ている間、ちゃんと自分のことができたわ。それよりもメラニーにここにいてほしいの」
「ですが、私がいればお医者様の出入りもありますし。何より……情けないです。何にもできないのに」
メラニーの瞳に、涙が盛り上がる。
真面目であるから余計、何もできない自分が悔しいのだろう。