イケメン伯爵の契約結婚事情
それは分かるが、アルベルトの手のついた侍女に続き間になど入られたらそれこそ問題だ。
(いやいっそ潜り込ませて逆に尻尾を掴むってのもありかしら?)
一瞬、物騒な発想に至ったが、そんなことをフリードが許すはずもないと思いなおす。
「ダメよ。メラニーはここにいないと……」
とはいえ、ここにいることが彼女のストレスになると思えば、無理も言えない。
エミーリアは困って腕を組みながら部屋中を歩き回った。
そしてふと、名案を思いついたのだ。
エミーリアは早速ベッドに駆け寄り、メラニーの両手を握りしめる。
「あなたにお願いしたい仕事があるわ、メラニー。座っていてもできることだし、あなたにしかできないことよ」
「そんなことありますか?」
「ええ。あのね……」
エミーリアが耳打ちすると、メラニーはキョトンとした顔をして、彼女をまじまじと見つめた。
「それは、……確かに私にしかできませんが」
「でしょう? お願いメラニー。私を助けると思って、ここにいてちょうだい」
きゅっと手を握れば、メラニーの顔がようやく晴れ渡った。