イケメン伯爵の契約結婚事情
*
執務室にて、フリードはディルクとともに書庫から持ってきた数冊の本を見比べていた。
「ほら、これだ。名はカマスというらしい」
フリードの指の先には、紫がかった青色の花が描かれている。中心から放射状に花びらが広がり、素朴だが可愛らしいという印象だ。球根の多年草で、自然に群生するものらしい。
「本当ですね。近くで見ないと何とも言えませんが、似ている気がします」
「エグモントが言っていた根が食用というのとも合致する。そしてこれによく似た花があるそうなんだ。それがこれだ」
フリードは別の本を取り出す。タイトルを見て、ディルクは息を飲んだ。気を付けるべき有毒植物、とそこには書かれている。
「デス・カマスという名で呼ばれるらしい。青紫色の花をつけるカマスに対し、花が白っぽい。よく似ているがこちらは強力な毒素を持っている」
「よく見つけましたね、こんな植物」
「エミーリアが枕元に置いていた本だ。あいつが寝入るまで何気なく読んでいたから記憶に残っていた」
「なるほど。……奥方様はいつも思いがけない幸運を下さる方のようですね」
ディルクの微笑みにフリードもつられそうになったが、慌てて咳ばらいをした。
「だが危なっかしい。気づかなかったということはまだ読んで無かったんだろうが、知っていたら無理矢理にでもあの丘に乗り込んでいったかもしれない。ここには記載されていないが、毒性があるということは素手で触るのも危険なのではないかな。叔母上の手袋、あれは毒素によるかぶれなんじゃないかと思ってる。こちらの屋敷に来なくなってかれこれ数年経つが、手を見せられないからこっちの屋敷には来れないが正解なんじゃないかと思うんだ」
執務室にて、フリードはディルクとともに書庫から持ってきた数冊の本を見比べていた。
「ほら、これだ。名はカマスというらしい」
フリードの指の先には、紫がかった青色の花が描かれている。中心から放射状に花びらが広がり、素朴だが可愛らしいという印象だ。球根の多年草で、自然に群生するものらしい。
「本当ですね。近くで見ないと何とも言えませんが、似ている気がします」
「エグモントが言っていた根が食用というのとも合致する。そしてこれによく似た花があるそうなんだ。それがこれだ」
フリードは別の本を取り出す。タイトルを見て、ディルクは息を飲んだ。気を付けるべき有毒植物、とそこには書かれている。
「デス・カマスという名で呼ばれるらしい。青紫色の花をつけるカマスに対し、花が白っぽい。よく似ているがこちらは強力な毒素を持っている」
「よく見つけましたね、こんな植物」
「エミーリアが枕元に置いていた本だ。あいつが寝入るまで何気なく読んでいたから記憶に残っていた」
「なるほど。……奥方様はいつも思いがけない幸運を下さる方のようですね」
ディルクの微笑みにフリードもつられそうになったが、慌てて咳ばらいをした。
「だが危なっかしい。気づかなかったということはまだ読んで無かったんだろうが、知っていたら無理矢理にでもあの丘に乗り込んでいったかもしれない。ここには記載されていないが、毒性があるということは素手で触るのも危険なのではないかな。叔母上の手袋、あれは毒素によるかぶれなんじゃないかと思ってる。こちらの屋敷に来なくなってかれこれ数年経つが、手を見せられないからこっちの屋敷には来れないが正解なんじゃないかと思うんだ」