イケメン伯爵の契約結婚事情


 アルベルトの屋敷から立ち上った煙は、領土中から確認できたらしい。
炎は屋敷のすべてと畑を焼き、やがて鎮火した。敷地が広かったため、隣家への被害はほぼなかったのが不幸中の幸いといえるだろう。


帰ってから一週間。
フリードは事後処理に追われて寝る間もないほどだった。

毒に関しては侍女から証言がとれ、実行犯であった侍女は解雇された。

続いてカテリーナの両親とともに叔父の領土に再び出向き、焼け跡から死体を確認し密葬を行った。
毒の密売ルートについては、カテリーナの実家に記録があり、今はその根絶と関わった人間の処分について奔走している。

半分近く減ると予想される収益を今後どうやりくりしていくかも課題で、連日屋敷には今後を憂う貴族の訪問が後を絶たない。


その間、エミーリアはいつものごとく部屋に閉じ込められ、放っておかれた。

もう三日も顔を見てない。
力になりたいのに、最初から排除されるのではどうにもできないではないか。

あちらが来るまで顔など見せるかと、ややふてくされた態度で、エミーリアは毎日を過ごしていた。


「エミーリア様。本日はフリード様が来られるそうですわ」

「えっ」


ぎこちなく動いていた指が止まる。
吉報を持ってきたメラニーは、細い指でエミーリアの間違いを指摘する。

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