イケメン伯爵の契約結婚事情

「私、一緒にいるうちに、フリードが……好きになったの」


フリードからは返事はまだない。あまりのいたたまれなさにエミーリアが顔を上げると、フリードは白い肌を真っ赤に染めて口元を抑えていた。


「ふ、フリード?」

「だったらなんでもっと早く言わない」

「言えないでしょ? 契約の結婚だもの。面倒くさいこと言い出したなんて思われたくないもの」

「そんなの俺だってそうだ。どれだけ我慢したと思ってるんだお前は」

「何をよ」


反論したとたんに、ベッドにひっくり返される。


「こうして、お前を独り占めすることに決まっているだろう」

「ちょ」


顔が近い。ドキドキして心臓が飛び出しそうだった。
切なげな瞳をしたフリードがゆっくりと近づいてくる。

唇が触れたときは電気が走ったような気がした。


「……好きだ」


耳に、甘い言葉とキスが交互に降ってくる。
エミーリアは息もつけない。親愛のキスなら家族間でも何度もしている。だけど、こんな浸食されるようなキスは初めてだ。


「そのままのエミーリアがいい。お転婆で、怖いもの知らずで」

「なに、それ。褒められた気がしないわ」

「そこが可愛い」


唇が首筋を伝う。
手はエミーリアの形を確認するかのように頭、頬、肩と輪郭をなぞっていく。

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