イケメン伯爵の契約結婚事情

「カール様」

「料理を運ぶのを、お願いします」

「はい。そちらのほうがずっと得意分野ですわ」


思いがけなくいい雰囲気の二人に、エミーリアとトマスは顔を見合わせた。


「いつの間に?」

「さあ、いつの間にかですね」

「そっか」


めでたい話はいつの間に進んでもらっていてもいいものだ。
エミーリアは満足して次のお皿に手を付けた。








食事を終えたエミーリアは着替えのために部屋に戻った。メラニーに手伝ってもらい、新しい乗馬服を着こむ。


「ぴったりですわね。……私、感激したんですよ。エミーリア様のために乗馬まで許可してくださるなんて。フリード様はお優しいですわね」

「そうね。また堂々とムートに乗れるなんて嬉しいわ」


今日はフリードとともに領土の西、義母が住むという屋敷へと向かう予定だ。


「戻ってきたら今度はドレスの採寸がありますから、お怪我などなさらないようにお願いします」

「ドレス?」

「フリード様から、喪が明けたら婚礼の式を大々的にやるから用意しろと申し付かっております」

「婚礼式?」

「ええ。フリード様の二十歳の誕生日に合わせて行うそうです。アルベルト様も亡くなられて、領主としてのお披露目もありますものね。仕立師にも、お戻りになられるまでに、デザインをいくつか用意するように伝えてあります」

「仕事が早いわね、メラニー」

「エミーリア様はじっとしておられないから、いるときに全部相談できるよう手配する技が自然と身についてしまいました」


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