イケメン伯爵の契約結婚事情
「そうだったのか。私に相談してくれればいいものを……でも安心しろ。お前の気持ちは彼に届いたようだ。彼からは美しいと評判のお嬢さんを、後妻にというのは不満だろうが大切にするからぜひにとおっしゃっている」
相談しろと言われる理由がエミーリアには分からなかったが、嘘をついているときは寡黙であれ、だ。
目を伏せたまま、「そうですか。喜んで」と口元を押さえた。
伯爵は娘のか細い声に感動し、是非ともこの婚姻を早急にまとめようと誓う。
幸い、輿入れに必要なベッドカバーは出来上がっているようだ。
「ではすぐに返事を出そう。トマス! トマスはいるか?」
オーバーアクションで伯爵が部屋を出ていくと、エミーリアはこらえ切れず笑いだした。
「お父様ってば、相変わらず、面白いわ」
「お嬢様、お嫁に行かれるんですか?」
メラニーはポニーテールにしている赤茶の髪を揺らしながら心配そうな顔をしている。純朴なこの侍女がエミーリアは大好きだった。
「そうね。……メラニーも来ない? そんなに長くはないと思うわ」
「え?」
「侍女を連れてきてもいいと言われているの。あなたが来てくれたら私も嬉しいんだけど」
不思議顔のメラニーに簡単に説明しようとしたとき、今度は母親が部屋にやってくる。