イケメン伯爵の契約結婚事情


「でかしたわよ、エミーリア。クレムラート家なら、格としてはうちが上。でもあそこは農業に強いの。タッグを組むにはベストな家柄よ」


こちらはやたらに打算的である。


「どうやって知り合っていたのか知らないけど、お手柄だわ。いい? 愛想つかされないように慎み深く、女性らしく。輿入れの日までスパルタで行くわよ」

「は、はい」


空気を切るような勢いで言われ、エミーリアは思わず背筋を伸ばした。
父親とは求めているものが違いそうだが、どちらも結婚に対しては賛成のようである。



こうして、エミーリアの婚姻については異例の速さで進められた。


クレムラート家から出た条件は、前妻を亡くして間もないので大々的な婚儀はしない、ということだった。伯爵は不満そうだったが、仰々しいドレスなど扱いきれないエミーリアにはむしろ好都合だ。

何度か個別にフリードともやり取りし、“人目につくところで乗らないこと”を条件に栗毛の愛馬・ムートを連れていくことも了承してもらえた。

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