イケメン伯爵の契約結婚事情
*
その日出された夕食はとても豪華なものだった。
「奥様の料理を担当させていただきます、カールと申します」
そばかすのある純朴な顔をした調理服の青年が、頭を下げる。
エミーリアは笑顔で彼と握手をした。
大きなテーブルに向かい合わせで座るフリードとエミーリア。側にはディルクが控え、カールは持ってきた料理を並べ始める。
「さあ、どうぞお召し上がりください」
やがてカールが下がっていき、食事の時間となったのだが、会話は弾まない。フリードとふたりきりの食事なことはまあ良いとして、どうして席と席がこんなに離れているのか。
「ねぇ」
「なんだ?」
「話づらいわ。テーブルが大きすぎるわよ。向かいの席なのに、声も届かない」
「届いているぞ?」
「大きな声出してるのよ」
これではいくらおいしい食事があったとしても食が進まないというものだ。
「そうか」
フリードは立ち上がると、広いテーブルの周りをぐるりと回り、エミーリアの隣の席に座った。
「ではこれでいいか」
得意気に笑われて、エミーリアはどんな顔をしたらいいか分からなくなる。
「隣も、……なんかちょっと」
違う気がする。
これはこれで距離が近すぎて落ち着かない。
ディルクが何か突っ込んでくれないかと思うけれど、彼は有能な側近のイメージそのままに無駄口を挟まず冷静な顔で二人を眺めていた。
その日出された夕食はとても豪華なものだった。
「奥様の料理を担当させていただきます、カールと申します」
そばかすのある純朴な顔をした調理服の青年が、頭を下げる。
エミーリアは笑顔で彼と握手をした。
大きなテーブルに向かい合わせで座るフリードとエミーリア。側にはディルクが控え、カールは持ってきた料理を並べ始める。
「さあ、どうぞお召し上がりください」
やがてカールが下がっていき、食事の時間となったのだが、会話は弾まない。フリードとふたりきりの食事なことはまあ良いとして、どうして席と席がこんなに離れているのか。
「ねぇ」
「なんだ?」
「話づらいわ。テーブルが大きすぎるわよ。向かいの席なのに、声も届かない」
「届いているぞ?」
「大きな声出してるのよ」
これではいくらおいしい食事があったとしても食が進まないというものだ。
「そうか」
フリードは立ち上がると、広いテーブルの周りをぐるりと回り、エミーリアの隣の席に座った。
「ではこれでいいか」
得意気に笑われて、エミーリアはどんな顔をしたらいいか分からなくなる。
「隣も、……なんかちょっと」
違う気がする。
これはこれで距離が近すぎて落ち着かない。
ディルクが何か突っ込んでくれないかと思うけれど、彼は有能な側近のイメージそのままに無駄口を挟まず冷静な顔で二人を眺めていた。