イケメン伯爵の契約結婚事情
「そうなの……でも、アルベルト様があなたに妻を娶らせたのでしょう?」
「俺を監視させたかっただけかもしれない。実際、前妻が生きていたときは、彼に先回りされているような感覚があった。子さえ身ごもらなければ、見限られることはなかったんだろう。今回も、やたら次の妻を娶るように勧めてきた。……これ以上犠牲者は増やしたくない。だから叔父とは何のつながりもない花嫁が必要だったんだ」
「そんな……」
「もちろん君を危険にさらすことになるのは悪いと思っている。だから全力で守る。それは信じてほしい」
「そうじゃなくて、あなたが……」
本当なのかフリードの想像に過ぎないのかはわからないが、もし本当にそうなら彼は酷く傷ついているはずだ。
慰めたいのか平然とした態度を怒りたいのか、自分でもわからずただ声を荒げたとき、フリードが目くばせをし、エミーリアの唇に人差し指を当てた。
そして入口に目を向けると、外に聞こえるような大声を出す。
「美しいな、エミーリア。我慢せず声をあげればいい」
「なっ」
真っ赤になったエミーリアの口を、フリードの手が押さえる。
「恥ずかしいのか? 可愛いな。もっと俺に見せろ、好きなだけ乱れるといい」
しばらく卑猥な言葉を並べたあと、フリードは気配をうかがい、息を吐きだす。
「今、戸の前に誰かがいた」
「なっ、なっ」
「そう赤い顔をするな。新婚初夜には当然の行動だろう。周りには俺たちが仲睦まじいと思わせておいた方が都合がいい」