イケメン伯爵の契約結婚事情
「それにしたって、あんなっ……」
「この程度で恥じらうのに、よく契約結婚などに了承したな」
くすくす笑いながら、フリードはエミーリアから離れていく。
「まあ今日は疲れただろう。ゆっくり寝るといい。聞きたいことはおいおい教えてやる。ただ、君も狙われる可能性はあるってことを覚えておいてほしい。巻き込んだ責任はとるよ、俺は君を守る。とりあえずは俺の言った二点をまもってくれ」
「……フリードはどこで寝るの?」
この部屋にはダブルベッドが一つしかない。
エミーリアがここを使ってしまったら、フリードはどこで寝るというのだろう。
「心配せずとも、お前が寝たら自室に引き上げる。すぐ戻ったんでは仲睦まじいアピールにならないだろう。いいから寝ろ」
「でも」
でしたらお話を、と思ったが、「寝ないと襲うぞ」と言われてはそれ以上訴えることもできない。
「……あの」
「なんだ?」
「お父様の事。嫌いだった……って、過去形なのはお亡くなりになったからなの?」
フリードは黙ったままだ。しばらく待ったが返事がないので、聞いてはいけないことを聞いてしまったかと、エミーリアは枕に頭を押し付け目をつぶる。
「ごめんなさい。話しにくいならいいわ。おやすみなさい」
「……お休み」
小さな返事がきたことにほっとして、目をつぶる。