イケメン伯爵の契約結婚事情

前妻が、もし本当にアルベルトの手の者で、それが身ごもったからという理由だけで殺されたのだとしたら、よそ者のエミーリアの命など、それより軽いだろう。
ただ、エミーリアは他領土の出身だ。ましてベルンシュタイン家は国の有力貴族。毒死などとなれば領土間の関係悪化につながる。


(お父様が力を持っているうちは、私を守る盾になってくれるってことだわ)


となれば、すぐ命を狙われるようなことはないだろう。
そう考え何度目かの寝返りを打つと、小さく低い声が聞こえた。

歌だ。
フリードが口ずさんでる。

しばらく聞いていて、それが誰でも知っているような子守歌だと気づく。


(音痴ね。全く違う歌かと思った)


おかしくなって、布団の中で自分を抱きしめる。
へたくそな歌は体の緊張をほぐしてくれたのか、急速に眠気が襲ってきた。



気が付いたら、近くに人の気配がした。
半分眠っているエミーリアは、耳で声は拾えるものの体は全く動かない。


「父上が嫌い、か。……今は、正直よくわからないな」


ギシ、とベッドが軽く軋んだ。
フリードが、入り込んできたのだろうか。


「変なところで鋭いお嬢さんだな」


小さな笑い声。


(なんだ、怒っているわけじゃないのね)


ホッとした途端、意識の方も急速に落ちていった。

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