イケメン伯爵の契約結婚事情
*
花の匂いと差し込む日光で目覚めたとき、そこにフリードはいなかった。エミーリアは身も心もきれいなまま、昨日と変わらない朝を迎える。
「あの、おはよう、ございます」
か細い声を上げるのはメラニーだ。
「おはよう、メラニー……」
起き上がろうとするエミーリアを、メラニーは咄嗟に押さえつける。
「いえ、今日はここで朝食をとらせるようにとフリード様に言いつかっております。体がきついはずだからって言われて」
言いながら、真っ赤になっていくメラニー。
「メラニー、あのね?」
「すごい痛いって言いますものね。あっ、すみません。私ったら。とにかく! 今日は体に優しいものをと、カール様が作ってくださいました」
「……ありがとう」
勘違いされているのは恥ずかしいが、きっとこのままの方がいいのだろう。
メラニーは侍女なだけに、もともと屋敷にいるものとの交流も今後増えていく。
余計な秘密を教えれば、むしろ危険にさらしてしまうかもしれないし、純朴な彼女がぼろを出さないとも限らない。
昨晩フリードが座っていた椅子に腰かけ、テーブルに乗せられた消化のよさそうな食事に対面する。
「頂きます」
とても美味しい。しかし、一人ポツンと食べる食事は、これはこれで味気ない。
本当の新婚夫婦なら、こんな時、恥じらいながらもふたりで食事をするのだろうに。
「なんか……寂しいわね」
「どうかなさいました? エミーリア様」
「いいえ」
意地悪な顔でもいいから、向かいに座ってほしい。
そう言ったら、彼は一緒に過ごしてくれるだろうか。
エミーリアは唇をかみしめる。
胸が落ち着かないのは、きっと昨日の花の香りがまだ辺りに残っているからだ。
花の匂いと差し込む日光で目覚めたとき、そこにフリードはいなかった。エミーリアは身も心もきれいなまま、昨日と変わらない朝を迎える。
「あの、おはよう、ございます」
か細い声を上げるのはメラニーだ。
「おはよう、メラニー……」
起き上がろうとするエミーリアを、メラニーは咄嗟に押さえつける。
「いえ、今日はここで朝食をとらせるようにとフリード様に言いつかっております。体がきついはずだからって言われて」
言いながら、真っ赤になっていくメラニー。
「メラニー、あのね?」
「すごい痛いって言いますものね。あっ、すみません。私ったら。とにかく! 今日は体に優しいものをと、カール様が作ってくださいました」
「……ありがとう」
勘違いされているのは恥ずかしいが、きっとこのままの方がいいのだろう。
メラニーは侍女なだけに、もともと屋敷にいるものとの交流も今後増えていく。
余計な秘密を教えれば、むしろ危険にさらしてしまうかもしれないし、純朴な彼女がぼろを出さないとも限らない。
昨晩フリードが座っていた椅子に腰かけ、テーブルに乗せられた消化のよさそうな食事に対面する。
「頂きます」
とても美味しい。しかし、一人ポツンと食べる食事は、これはこれで味気ない。
本当の新婚夫婦なら、こんな時、恥じらいながらもふたりで食事をするのだろうに。
「なんか……寂しいわね」
「どうかなさいました? エミーリア様」
「いいえ」
意地悪な顔でもいいから、向かいに座ってほしい。
そう言ったら、彼は一緒に過ごしてくれるだろうか。
エミーリアは唇をかみしめる。
胸が落ち着かないのは、きっと昨日の花の香りがまだ辺りに残っているからだ。