イケメン伯爵の契約結婚事情
「……噂って面倒なものね」
「そうだな。しかも案外と本質をついていないしな」
エミーリアはため息をつきつつ、彼の背中に語り掛ける。
「分かりました。でも、これでも私頑張っているのよ? ホントは今すぐにでもムートに乗りたいところを、トマスに様子を聞くだけで我慢しているんだから褒めてほしいところだわ」
「ははっ」
フリードが突然吹き出した。エミーリアはびっくりして目を丸くして彼を見つめる。
「褒めろってか。面白いな、お前は。……そうだな。そのうち外に連れ出してやろう。馬に乗るとすれば目立ってはいけないから出会った山でになると思うが」
「本当?」
一気に晴れやかになった顔を見て、フリードはますます笑いをこらえきれなくなる。
思う存分笑った後、エミーリアの頬を軽くなでる。
「分かったよ、奥さん。数日待ってくれ」
そのしぐさにドキドキしながら、エミーリアはいつもより楽しい気分で本を数冊抱えて部屋へと戻った。