イケメン伯爵の契約結婚事情
*
その夜。エミーリアはいつものようにメラニーに服を整えてもらい、寝室でフリードを待った。
「奥様、そんなにそわそわしては待ちくたびれますよ」
ニヤニヤするメラニーは完全に夫のお渡りを待つ妻への冷やかしが込められている。
思わず真っ赤になったエミーリアは窓の外を見た。
「そういうんじゃないわ。ただ、話をするのが楽しみなだけで」
「仲がよろしくて何よりです。私もほっとしました」
「仲がいいわけじゃ……」
無いわよ、と言おうとして言葉が止まったのは、窓の下に動く明かりを見つけたからだ。
ちろちろと淡くきらめくのはろうそくの光だろうか。
「メラニー、あれ」
「え?」
じっと見ていると目が慣れてくる。スカートの影が見えるところを見れば侍女だろうか。調理場のある方向へと小走りで進んでいく。
「夜食の準備ですかね。たまにアルベルト様がご所望されると聞いたことがあります」
「そうなの」
「ええ。夜は通いのシェフたちも帰ってますから、簡単なものしか出ないという話ですけど」
「そう」
「あ、そろそろフリード様が来られますね。私は部屋に下がらせていただきます。どうぞごゆっくり」
続き間に下がるメラニーを見送り、エミーリアが本に手を伸ばして読み始めると数分でフリードが入ってきた。
その夜。エミーリアはいつものようにメラニーに服を整えてもらい、寝室でフリードを待った。
「奥様、そんなにそわそわしては待ちくたびれますよ」
ニヤニヤするメラニーは完全に夫のお渡りを待つ妻への冷やかしが込められている。
思わず真っ赤になったエミーリアは窓の外を見た。
「そういうんじゃないわ。ただ、話をするのが楽しみなだけで」
「仲がよろしくて何よりです。私もほっとしました」
「仲がいいわけじゃ……」
無いわよ、と言おうとして言葉が止まったのは、窓の下に動く明かりを見つけたからだ。
ちろちろと淡くきらめくのはろうそくの光だろうか。
「メラニー、あれ」
「え?」
じっと見ていると目が慣れてくる。スカートの影が見えるところを見れば侍女だろうか。調理場のある方向へと小走りで進んでいく。
「夜食の準備ですかね。たまにアルベルト様がご所望されると聞いたことがあります」
「そうなの」
「ええ。夜は通いのシェフたちも帰ってますから、簡単なものしか出ないという話ですけど」
「そう」
「あ、そろそろフリード様が来られますね。私は部屋に下がらせていただきます。どうぞごゆっくり」
続き間に下がるメラニーを見送り、エミーリアが本に手を伸ばして読み始めると数分でフリードが入ってきた。