イケメン伯爵の契約結婚事情
アルベルトは祖父がメイドに産ませた子である、と知ったのは祖父が事故で他界し、後継者を決めるときだ。
当時、フリードは十一歳、父のゴードンが三十二歳、アルベルトは二十三歳だった。
後継者は父だったが、彼に政治的才能はない。
領土内の不満が上るにつれ、アルベルトの支持が上がっていく。祖母は、妥協案として共同統治をふたりの息子に命じた。
結果として、愚鈍な領主よりも成績優秀で決断力もあるアルベルト叔父が仕切るようになるのは当然のことだ。
父は趣味の狩りにかまけて、西の山へと入りびたり、叔父が全ての経営を取り仕切るようになっていた。
間近でそれを見ていたフリードは、父を軽蔑し、アルベルトを尊敬していた。
いつかアルベルトのような領主になりたいと思っていたし、そうなるべきだとも思っていた。
そんな父が、狩りに出て事故に遭ったのが三年前だ。
フリードは十六になったばかりで、勉強はしていたものの、父親への反抗心から荒れていた時期だった。
家来の大半がアルベルトが次期当主になると思っていたし、本人も意識していただろう。
しかしそれに待ったをかけたのが代々伝わる掟とすでに隠居中の祖母だった。
【家督は直系男児が継ぐべし。そのものが二十歳を超えない場合、摂政として近親者が補佐すること】
アルベルトは妾腹だから直系男児とは言えない。
これが祖母の主張だった。