イケメン伯爵の契約結婚事情
かくして唯一の直系男児であるフリードが家督を継ぐことになり、アルベルトは今まで通り補佐役の立場を貫くこととなった。
叔父が当主とならなかったのは残念だったが、そうであれば自分が彼に認めてもらえるような領主になればいい。
今までの素行を改め、真面目な領主になるべくフリードは奮闘した。
叔父ならばきっと、自分に協力し共により良い領土を作ろうとしてくれると信じていた。
しかし領地の経営について学ぼうとアルベルトに教えを乞うても、やんわりと断られる。
それはどの問いかけに対しても同様で、案に父と同じ傀儡であれと言われているようで、フリードはアルベルトに不信感を持ち始める。
フリードは父親と違って聡明な青年だ。
アルベルトから学ぶことは不可能だと早々に見切りをつけた彼は、側付きの従者であるディルクとともに領内をめぐり、ゆっくりとだが一つ一つ学んでいった。
父親が好きだった領土境の山に向かう一帯は、アルベルトの興味も薄い土地だったため、まずはそこで農地の管理方法を学んだ。
気軽に話しかけてくるフリードに、領民たちは好感を抱き始める。
実際農業に従事する者の声を直に聞き、水路の整備などに生かしていくフリードのやり方は効果的で、西方地区を中心にフリードの指示率は上がっていった。