イケメン伯爵の契約結婚事情

それが面白くないのか、アルベルトはフリードに縁談を持ち掛けてきた。まだ早いし仕事を覚えているところだからと断ろうとしたが、領内の有力貴族の娘を相手に連れてこられては、体面上断るわけにはいかなかった。

叔父としては、フリードを政治から切り離したかったのだろう。
しかしながら、美しい妻はまるで人形のようで、フリードの心を動かさない。

とはいえ、夫婦生活は無難に過ぎていった。
隠れて叔父と会っているという情報も小耳には入ってきたが、元々叔父の紹介だから目くじらを立てるのもおかしな話だ。

やがて、視察に行こうとしていた先に叔父の手が回っていることを知ったフリードは、寝室に仕事上の書類を持ち込むことを辞めた。

内密の話はディルクと鍵のかかる私室にて行う。
次第に資料も増えはじめ、いつの間にかそこがフリード専用の執務室になった。


フリードはずっと疑問だった。

アルベルトはなぜ、自分に仕事を教えようとしないのか。
妻に監視させるようなことをするのか。

フリードにはアルベルトを排除するつもりなどなかった。
むしろ、彼に認められたくてたまらなかったのだ。

まだまだ自分には能力が足りないのだろうかと、叔父の土地の帳簿を確認しているとき、不自然な金額の取引を発見する。

そしてそこを追求しようとすればするほど、叔父はフリードを遠ざけようとした。

疑念が確信に変わる。
叔父はきっと、何らかの不正をしているのだろうと。


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