イケメン伯爵の契約結婚事情
「ふふっ。なんだ。知らないなら知らないって言えばいいのに。だったら私が調べてあげるのに」
「言えるか。俺は領主だぞ?」
「あら。領主になった途端にすべてわかるわけでもないじゃない」
フリード相手に立場が上になれることなど珍しいので、調子に乗ってまくしたてていると、ディルクが傍に寄って耳打ちした。
「エミーリア様、その辺になさいませ」
「でも」
「フリード様は、エミーリア様にいい格好したいんですよ。察してくださいませ」
そう言われて、今度はエミーリアが真っ赤になる。
思わずスプーンを落としてしまって、がしゃんと大きな音が室内に響いた。
怒られるかと体をびくつかせたエミーリアに、フリードから返ってきたのはかみ殺した笑いだった。
「……子供みたいだな」
「なっ」
「だってそうだろ。さすがは深窓の令嬢」
「もうっ、何よ嫌味ね!」
半分ケンカしているようなものなのに、一緒にとる朝食は楽しかった。
これからも毎日、こうしたいと願うほどに。
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