イケメン伯爵の契約結婚事情
*
道中は輿入れの日同様、領民たちへの顔見せを兼ねての移動だった。時々領内の有力貴族に挨拶をしつつ、今日は先を急ぐからと接待はやんわりと断りながら、ようやく領土境の山までやってくる。
少し奥に入ったところで、エミーリアはいてもたってもいられずフリードの愛馬から飛び降りた。
「馬鹿、危ない」
「大丈夫よ」
「お転婆も大概にしろ。怪我をしたらムートに乗れないだろう」
いさめられて、しかもそれが正しいものだからエミーリアは唇を尖らせた。
「大丈夫ですよ、フリード様。これくらいで怪我するようなエミーリア様ではありません」
トマスの口添えに、エミーリアはほっとしてムートへ駆け寄る。
「ムート」
結婚前にそうしていたように、首から背中にかけて毛を撫でてやると、興奮気味だったムートが気持ちよさそうに目を細める。
綱を抑えていたトマスは、フリードにお伺いを立てるように視線を送り、頷いたのを確認すると手綱をエミーリアに渡した。
「フリード。乗ってもいい?」
「止めても乗るくせに。許可がいるのか?」
ふてくされた様子のフリードに、エミーリアは軽やかに笑って見せる。
道中は輿入れの日同様、領民たちへの顔見せを兼ねての移動だった。時々領内の有力貴族に挨拶をしつつ、今日は先を急ぐからと接待はやんわりと断りながら、ようやく領土境の山までやってくる。
少し奥に入ったところで、エミーリアはいてもたってもいられずフリードの愛馬から飛び降りた。
「馬鹿、危ない」
「大丈夫よ」
「お転婆も大概にしろ。怪我をしたらムートに乗れないだろう」
いさめられて、しかもそれが正しいものだからエミーリアは唇を尖らせた。
「大丈夫ですよ、フリード様。これくらいで怪我するようなエミーリア様ではありません」
トマスの口添えに、エミーリアはほっとしてムートへ駆け寄る。
「ムート」
結婚前にそうしていたように、首から背中にかけて毛を撫でてやると、興奮気味だったムートが気持ちよさそうに目を細める。
綱を抑えていたトマスは、フリードにお伺いを立てるように視線を送り、頷いたのを確認すると手綱をエミーリアに渡した。
「フリード。乗ってもいい?」
「止めても乗るくせに。許可がいるのか?」
ふてくされた様子のフリードに、エミーリアは軽やかに笑って見せる。