イケメン伯爵の契約結婚事情
*
「こちらがお部屋になります。狭いかもしれませんが宿一番の部屋です。ご勘弁ください」
「そんなに恐縮するな。急に言って部屋を用意してもらっただけで感謝している」
「いえいえ。領主様がお泊りになるなど初めてなもので、至らぬところがあったらいくらでもおっしゃってください」
宿屋の店主は、入店してからこっち、頭を下げまくっている。後から顔を思い出そうとしても思い出せないだろう。
エミーリアは通された部屋に入り、ふうと息をついた。
大きな窓がとられていて、ベッドは二つ。こじんまりとしていて、正直屋敷の寝室よりも狭いが、こぎれいにされていて、棚に飾られた手作りらしい小物が可愛らしい。
「私とトマスは隣の部屋におりますので、いつなりとお呼びください」
ふたりの従者は頭を下げ、早々に部屋を引き上げる。
そこではたと、この部屋を使うのが自分たちふたりなんだとエミーリアは気づいた。
途端に緊張してきて、ベッドカバーの裾を握りしめる。幾何学模様が刺繍された独特な模様のベッドカバーだ。これは宿の女将が作ったのだろうかとふと考える。
「明日は、叔父の領地を回る。事前には伝えていないから、遠くから見て君が花を見たがったことにしたいんだがいいか?」
「ええ。アルベルト様の領地で、花畑を確認するのね?」
「そうだ。異様な高値で取引されるものが何なのか。今度こそ突き止めてやる」
こぶしを握り締め、決意を新たにしているフリードは、明日のことですっかり頭がいっぱいのようだ。
(同じ部屋でドキドキしてるのなんて私だけね)
寂しいような残念なような気持ちでいると、部屋の扉がノックされる。
軽装になったトマスがそこにいた。
「こちらがお部屋になります。狭いかもしれませんが宿一番の部屋です。ご勘弁ください」
「そんなに恐縮するな。急に言って部屋を用意してもらっただけで感謝している」
「いえいえ。領主様がお泊りになるなど初めてなもので、至らぬところがあったらいくらでもおっしゃってください」
宿屋の店主は、入店してからこっち、頭を下げまくっている。後から顔を思い出そうとしても思い出せないだろう。
エミーリアは通された部屋に入り、ふうと息をついた。
大きな窓がとられていて、ベッドは二つ。こじんまりとしていて、正直屋敷の寝室よりも狭いが、こぎれいにされていて、棚に飾られた手作りらしい小物が可愛らしい。
「私とトマスは隣の部屋におりますので、いつなりとお呼びください」
ふたりの従者は頭を下げ、早々に部屋を引き上げる。
そこではたと、この部屋を使うのが自分たちふたりなんだとエミーリアは気づいた。
途端に緊張してきて、ベッドカバーの裾を握りしめる。幾何学模様が刺繍された独特な模様のベッドカバーだ。これは宿の女将が作ったのだろうかとふと考える。
「明日は、叔父の領地を回る。事前には伝えていないから、遠くから見て君が花を見たがったことにしたいんだがいいか?」
「ええ。アルベルト様の領地で、花畑を確認するのね?」
「そうだ。異様な高値で取引されるものが何なのか。今度こそ突き止めてやる」
こぶしを握り締め、決意を新たにしているフリードは、明日のことですっかり頭がいっぱいのようだ。
(同じ部屋でドキドキしてるのなんて私だけね)
寂しいような残念なような気持ちでいると、部屋の扉がノックされる。
軽装になったトマスがそこにいた。