イケメン伯爵の契約結婚事情
7.叔父の農園
 相変わらず清い体で目覚めた朝。フリードはすでに着替えを終え、くつろいだ様子でベッドに腰掛けながら目元をこするエミーリアを見ていた。エミーリアはごろりと寝返りを打って、寝起きの顔を慌てて隠す。


「よく寝れたようだな」

「……まあ、ね」


嘘である。寝れたのは明け方だ。
隣にいる男が気になって眠れなかった、などとは口が裂けても言えない。彼が寝返りを打つたびに、ドキドキしながら、寝たふりに気づかれないよう規則正しい寝息を打つことにだけ集中していた。


(バカみたい、私)


フリードは何も気にせず熟睡していたというのに、自意識過剰もいいところだ。


「着替えます」

「じゃあ表に出ている」

「いいわよ、見ないでさえいてくれれば」


上半身を起こし、夜着に手をかける。どうせ欲情も何もしないのでしょうとふてくされていると、隣のベッドから枕が飛んできた。頭にぶつかったそれを、胸元に抱えなおし彼を恨みがましく見つめる。
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