奏 〜Fantasia for piano〜
「綾が好き。俺と付き合って」
「ごめんなさい」
「だよな。今のが最後の告白だから。
もう言わねー」
これが最後の告白って……どうして?
これからも告白されたいわけじゃなく、なんとなく習慣的になっていたので、これからも言われ続けるものだと思っていた。
「なにかあったの?」と聞いたら、宏哉はサッパリと割り切ったような笑みを浮かべた。
「いや、高校野球もやりきったし、恋も俺なりに全力投球したから、これで区切りつけようと思って。
で、これからは必死に勉強する。大学はW大に行きたいんだ。野球、強いし」
「W大⁉︎ 無理でしょ」
W大は東京の有名私立大学。
うちの高校だと、学年順位で三番以内に入れないと合格できないだろう。
宏哉は野球に全てを捧げていた感じで、勉強の方は成績がよくない。
無理だと言った私に、宏哉は口を尖らせる。
「絶対に現役合格してやっから。見てろよ」
やる気に満ち溢れた強い眼差し。
それを見たら……宏哉なら、やるかもしれないという気持ちにさせられる。
これだと決めたら、全力で立ち向かう奴だから……。