奏 〜Fantasia for piano〜
私のこれからの予定は、職員室でうさぎ組便りを作成し、明日の工作時間のための下準備。
子供達が帰った後も、雑務がいっぱいなんだけど……。
それでも爽くんに「よーし、夕方まで先生と遊ぼう!」と返事をした。
アップルクラブは、働く保護者が迎えに来る夕方まで子供達を園内で遊ばせる預かり保育で、先生はクラス担任とは別になる。
そのアップルクラブに、爽くんはまだ馴染んでいない。
アップルクラブのほとんどの子は年少組からの利用で慣れているけど、爽くんは先週から突然利用が始まった。
その理由は、第二子を妊娠中のお母さんに切迫早産の恐れがあり、入院したからだ。
今までは早い時間に園バスで帰っていたのに、今は十八時に爽くんのお父さんが迎えに来るまで帰れない。
お母さんの不在と、急な環境の変化。
一見元気そうだけど、小さな心に結構負担がかかっていると私は知っている。
私の五歳の頃と重ねて、爽くんを見ていた。
扉だらけの白い世界のことが頭をよぎり、『あの世界には行かせないぞ!』という気持ちだった。