奏 〜Fantasia for piano〜
アップルクラブの先生に連絡してから、爽くんと一緒にお絵描きを始める。
どうせ描くならと、画用紙八枚も使った紙芝居を作ることにした。
爽くんは工作が得意。
私が描いた下絵にクレヨンで色を塗ったり、折り紙を細かく切って貼ったり、色付けは全部彼に任せた。
楽しそうに熱中する爽くんと、おやつ休憩を挟んで二時間半も工作して、網戸から入る風に涼しさを感じる頃に、ついに紙芝居が完成した。
「爽くん、上手にできたね」
「うん!」
「これ、明日の朝の会でみんなに見せようか?」
「うん! あ、でも、お話がまだないよ?」
お話は、今作る。
爽くんに紙芝居を持たせ、私は電子ピアノに電源を入れた。
どうしてピアノなのかと不思議そうな顔をする爽くんに、「先生が合図したら次の絵に変えてね」とお願いして、歌いながら伴奏した。
『僕はもうすぐ お兄ちゃん
お母さんの お腹はふっくら
ぽんぽこりんの 狸さんみたいに
中では僕の妹が 親指しゃぶって寝んねして
生まれてくる日を 待っている』