奏 〜Fantasia for piano〜

この紙芝居の主人公は、爽くん。

寂しさよりも、妹が生まれる日をワクワクして待っていられたらと願い、それを即興の歌にした。


「はい、次ね」と言うと、爽くんは次の絵を一番前に出す。


お腹の中の赤ちゃんは、お兄ちゃんに遊んでもらえる日を楽しみにしていることや、いつもとちょっと違う生活だけど、お母さんとお父さんは一生懸命で、赤ちゃんのことも爽くんのことも両方大切に想っていることを伝えたかった。


生まれた後は家族の増える喜びと、爽くんが『僕が妹を守る!』と頼もしく抱っこしているシーンを歌に乗せた。


八枚の紙芝居を歌い終えたら、爽くんの目に涙がキラリ。


「わっ、爽くん、ごめん。
寂しくなっちゃった?」

「ううん、なんか嬉しい。
心の中が、もわんとなった」


もわん……? それは、心が温められたという解釈でいいのかな?

私のエプロンに顔を押し当て涙を拭くと、爽くんは「綾先生、大好き!」と可愛い笑顔を見せてくれた。


そのとき、園内放送で呼ばれる。

『うさぎ組の綾先生、綾先生、村上爽くんのお父さんがお迎えに来ています』


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