奏 〜Fantasia for piano〜
奏も似たようなもの。
どれくらいあの町にいたのか知らないけれど、次の冬におばあちゃんの家に行ったときにはもういなかったから、きっと私と同じように両親の元に帰ったのだと思う。
出会った場所はお互いに一時的に身を寄せていた田舎町で、この街とは違う場所。
田舎での再会ならあり得そうだけど、まさかこの大きな街で、また出会えるなんて……。
奇跡と言われた言葉に「そうかも」と小さな声で呟いたら、梨奈は興奮気味のテンションを少し下げてくれた。
でも、再会を喜べずにいることは理解されなかったようで、「嬉しくて泣きそうなの?」と誤解された。
先生は一度教室を出て、机と椅子を手にすぐに戻ってきた。
それを窓際の列の最後尾に置き、黒板前に立つ奏を呼ぶ。
「香月の席な。視力が悪いなら誰かと場所変えるけど、どうだ?」
「そこで大丈夫です」
私の横の通路を、奏が歩いてくる。
長い足は正確なリズムを刻み、早くもなく遅くもないアンダンテのテンポで。