君の幸せな歌を


「プライベートなことになってしまうんですけど、結婚します。お相手は高校の頃からお付き合いしている一般の方です」


堂々と言い切った冬和が、また深々と頭を下げる。すると、驚きの声の後にびっくりしてしまうほどの拍手と歓声。

たくさんの「おめでとう」という祝福の言葉が聞こえてきて、あたしはライブタオルで顔を覆った。周りから見たらショックで泣き出すファンに見えるかもしれないけど、そんなのはどうでも良かった。

嬉しい。そんな言葉じゃ表せない。誰かに伝えることはできないけど、心の中でありがとうを繰り返した。


「ありがとう。僕にとって本当に素敵な方です。これからも精いっぱい音楽をやっていくのは変わらないので、ファンの皆さん、応援よろしくお願いします」


本間くんが冬和の肩を叩いて、客席に笑顔を向ける。


「冬和がファンの方に直接伝えたいということでね、こういう形をとらせていただきました。さてそれでは、最後の曲にいきたいと思います!」


ドラムの音が聴こえて、手拍子が始まる。あたしも涙を拭って、手を叩いた。

最後を飾った曲は、『Midwinter』のデビュー曲だった。


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