君の幸せな歌を
「わあ、芸能ニュースすごいよ」
次の日の朝。テレビをつけると、冬和の結婚報告のニュースがちょうどやっていた。
今日は日曜だから芸能ニュースをやっている番組が少ないけど、ネットでは大騒ぎだ。一般女性とっていうのは意外と大丈夫なものらしい。
あの女優とじゃなくて良かったというコメントをいくつも見かけて笑ってしまった。
芸能ニュースはあれだけ女優とって言っていたのに、まったくそのことに触れてないんだから面白い。
何にしても、祝福されていてあたしは嬉しかった。
「眠い……」
「ちょっと、冬和。もうお昼だから。あと婚姻届、いつ出すの?」
「来月のバンド結成の日」
なるほどね。うなずいて、眠そうな冬和の肩に寄りかかる。
「とりあえず、両親に挨拶しに行かなきゃいけないよね。いつ空いてる?」
「んー、後にしよう」
ごろんとそのまま倒れた冬和は、目を閉じた。寄りかかっていたあたしまで倒れそうになって、手をついて堪える。おいこら、寝るな。大事な話をしてるのに!
「冬和、昨日疲れたのはわかるけどここで寝られたら困るよ。コーヒー入れてあげるから起きて」
「月歌は何飲むの?」
「決まってるじゃん」
あたしはオレンジジュース。君はコーヒー。高校の頃から変わってないよね。
「待って。一緒に寝よう」
軽くくちびるを重ねて、柔らかく冬和が笑う。
「……何でも許されると思ってるでしょ」
「んー」
仕方ないなあと冬和の隣に寝転んで、あたしはゆっくりと目を閉じた。
……君と歩んでこれたこと、これから歩んでいけること、あたしは世界一幸せだって思ってるよ。
*END*