【短編】きっと、本気の恋だった。
今日、学校に来て一番驚いた出来事だ。
考えてみて欲しい。
昨日まで黒髪だった幼馴染みが、突然銀髪になっていた朝七時を。
顔立ちの整った円に不似合いでは無いけれど、でもやっぱり違和感がある。
不良に見えないのが救いかもしれない。
円は物腰が落ち着いていて、いつも上品な雰囲気を醸し出しているから。
「やっぱり変か」
彼は少し考えるような仕草をしてから髪に手を当てた。
「似合ってるけど…どうして染めたの?」
「言われたんだ、これと似たような髪の人に」
円は口数が少ない。
いつもは気にならないのに、今は少し焦れったく感じる。
「何て言われたの?」
「『僕と同じ色にしろ。そうすればずっと忘れない』」
一文字一文字を噛み締めるようにその人の言葉を復唱し、円は沈黙する。
対して私の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだった。
「忘れないって、何をかしら。貴方は何を忘れる可能性があるのかしら」
首を傾げながら、ふと顔を上げると円と目が合う。
こちらを真っ直ぐに見て、何かを悟ったような顔をしている。
「僕には、分かる気がする」
またクエスチョンマークが飛び交った。