恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
「こちらこそ、萌香さんにありがとうを伝えないと。謝らないといけないのは、わたくしのほうなのに」

あおいさんは申し訳なさそうに視線をテーブルに落とした。

「ごめんなさい。あたくしが計画したものなの」

「あおいさんが?」

こくりとあおいさんが首を縦に振った。

「萌香ちゃんがうまく『カントク』の中で機能してないんじゃないかって、見てられなかったのよ。萌香ちゃんの手柄にしてあげようとおもっていたら、それ以上に強靭な力が野村さんに備わっているとはおもわなくて。結果、大上部長が考えていた通りのシナリオになってしまったけれど」

あおいさんはあおいさんなりにわたしのことを思っていてくれていたなんて。

「大上部長、『椎名萌香を泳がせてしまった責任は俺にある』って強がり言っちゃってたわよ」

そんなこと、あおいさんに言っていたんだ。
大上部長も反省してたなんて、知らなかった。

「大上部長はいろんな人を助けているわね。あたくしもその一人よ」

「あおいさんもですか」

「ええ。あたくしは生まれてからずっとカゴの中の鳥みたいな存在でしょ。いろんなことを学びたくても女だからっていうことで違うことばかり学ばされて」

「そうなんですか」

「年を重ねていくにつれて自分のやりたいことじゃないって気がついて。この会社の秘書になったけれど、どうしてもやりたいことがあるんじゃないかって悩んでいたの。そうしたら大上部長と出会ってね」

大上部長は社長室兼任だからそこであおいさんと出会ったんだ。
大上部長のことを話すあおいさんの目が輝いてみえて、心が軋んだ。
< 102 / 149 >

この作品をシェア

pagetop